圧倒的な筆の勢いと、抽象と具象のはざま、といった独自の画風で勝負するピエール・アレシンスキー(Pierre Alechinsky)は、ベルギー現代美術を代表する画家の一人です。
アレシンスキーは、ベルギー・ブリュッセル出身。高校卒業後、市内の美術工芸学校で本の装丁の課程に入学、ここで版画も学ぶ。1947年、20歳の時に「若きベルギー絵画」というグループに加わる。同年にブリュッセルの画廊で早くも個展を開き、批評家の目に留まる。1948年、コペンハーゲン、ブリュッセル、アムステルダムの頭文字をとって命名されたコブラ(CoBrA)という国際的な芸術家集団の結成メンバーとなる。このグループはまさに威嚇する毒蛇のように、プリミティブで力強く迫力ある作品を世に問いかけ、戦後のヨーロッパ美術の潮流を形作ることとなる。
コブラの活動は短命に終わり、1951年の解散後はパリに移住。
日本とも深い関わりを持ち、禅の画家・仙厓を師と仰ぐほか、前衛書道家・森田子龍と交流があり、その自由闊達な筆の動きに影響を受けました。1955年に来日し、「日本の書」という短編映画を撮影しているほどです。日本滞在のあと、次第に大きなキャンバスや紙を書道のように床に置いて描くようになっていきます。
さらにアレシンスキーはアメリカのコミック本にも刺激を受け、枠を設けて描く独特のスタイルを生み出しました。このほか、文筆家としても活躍するアレシンスキーの絵画作品には、文字や言葉に対する強い思い入れが随所に見受けられるのも特徴です。
本展は日本・ベルギー友好150周年を記念して開催される日本初の待望の回顧展です。
90歳近い現在も、精力的に創作を続けているアレシンスキーの作品約80点が展示されます。
会期:2016年10月19日(水) ~ 12月8日(木)
10月24日(月)のみ休館
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム