メキシコ在住のベルギー人アーティスト、フランシス・アリスは、都市の中を歩きまわることで社会に潜む問題をとらえ、さまざまな表現手段を用いて現代社会への寓意に満ちた作品を制作してきました。
日本初個展となる本展では、初期作品から新作まで、社会の中でアートが果たす役割を一貫して問い続けてきたアリスの創作活動の全貌を2期にわたって紹介。
第2期では、アフリカとヨーロッパを隔てるジブラルタル海峡で行った大規模なプロジェクトを紹介します。移民問題を背景に、アリスは子供たちとともに想像力を駆使して二つの大陸に橋をかける試みをします。新作となる本プロジェクトを、映像、インスタレーション、絵画、ドローイングなどを通して創作した作品約140点を展示します。
会期:2013年6月29日(土) ~ 9月8日(日)
会場:東京都現代美術館
写真: フランシス・アリス、《川に着く前に橋を渡るな》、2008年、ジブラルタル海峡、アクションの記録映像と写真、© Jorge Golem |
フランシス・アリス(Francis Alÿs)
1959年アントワープ生まれ。ベルギーおよびイタリアで工学と建築を学んだ後、1986年からメキシコに在住。主にメキシコの社会状況の寓意に満ちた作品を、パフォーマンス、映像、写真、絵画、ドローイングなど異なる手法を用いながら、「歩くこと」を主題に制作している。90年代後半よりヴェネツィア・ビエンナーレなどに招待され、国際的に注目される。2010年にロンドンで大規模な個展が開催され、翌年にニューヨークに巡回。2012年にはドイツの国際展「ドクメンタ13」に参加。
真夜中に無人のギャラリーに一匹の狐が放たれ、館内を歩きまわる姿を監視カメラで撮影した「The Nightwatch」、アリスが短い棒を片手に鉄柵やガードレールなど街中の公共物を叩いて音を鳴らしながら、ロンドン市街を歩きまわるだけの作品「Railings」、英国の近衛兵軍楽隊が異なる地点からバラバラに歩行を開始し、ロンドンの市街をランダムに動きまわる作品「Guards」、男性が羊を先導してポールを周回しつづけるのを淡々と描いた作品「愛国者たちの物語」などがある。