ドキュメンタリーとルポルタージュを中心に活躍するベルギーの写真家たちが、各自の視点で捉えたブリュッセル。
2010年6月から9月にかけて、ベルギー人写真家たちによるグループ展「Facing Brussels」がブリュッセルのベルビュー博物館にて開催され、大きな反響を呼びました。
出展者はいずれも、ドキュメンタリーとルポルタージュの分野で国際的に活躍している写真家たち。
大手メディアの報道写真家として世界中を飛び回る傍ら、独自のテーマを追求するプロジェクトも手掛けている彼らが、共同プロジェクトとしてベルギーの首都ブリュッセルを被写体に思い思いの視点からシャッターを切りました。
古くからこの地に根差す人、移民として暮らす人、通勤する人、観光やビジネスで訪れる人、悠々自適の高齢世代、貧困に直面する若者層、行き場を失っ た浮浪者など、多種多様な人たちが織りなす日々の営みや人間模様が相俟って、ひとつの大きな文化をつくり上げているベルギーの首都ブリュッセルは、ヨー ロッパの縮図ともいえる様相を呈しています。
けれども、私たちが知りうるブリュッセルはそのほんの一面でしかありません。
日々社会や人間と向き合う写真家たちの眼差しが捉えた瞬間からは、ブリュッセルという街が持つ様々な顔が浮かび上がってきます。
被写体の選択、一瞬を逃さない感性、構図や手法など、各写真家の持ち味が発揮された作品を堪能しながら、ブリュッセルの「今」を読み解く「Facing Brussels」。観光だけでは味わえないブリュッセルの魅力を発見してみてください。
本展は日本初公開。また、ほとんどの写真家が日本初出品となります。
Tim Dirven
Dieter Telemans
ディーテル・テレマンス(1971年生まれ)
長年に渡りフリーランス写真家としてベルギーの有力紙De Morgenに従事した後、2003年よりオランダのフォトエージェンシーHollandse Hoogteおよび英国のフォトエージェンシーPanos Picturesを中心に活動する。「Nikon Award」、「WHO International Prize」および「Spiegelprijs」を受賞。英インディペンデント紙、ニューヨークタイムズ紙、仏リベラシオン紙など、大手メディアで国際的 に活躍する傍ら、独自のプロジェクトも手掛けており、アフリカのダンスをテーマにした代表作「HEART OF DANCE」展は世界各地で開催され、同名の写真集も刊行されている。最近では、世界中で深刻化する水の問題を訴えるプロジェクト「TROUBLED WATERS」を立ち上げ、写真集も出版された。
Jan Locus
ヤン・ロクス(1968年生まれ)
ブリュッセルを拠点に活動するフリーランス写真家。アントワープ写真博物館の依頼で「De bewegende stad(1997年Pandora出版)」を刊行、後に代表作「Mongolia」(2005年Cypres出版/Fotomuseum Antwerpen)はベストアートブックに贈られるPlantin-Moretus賞を受賞。このほか、アントワープの畜殺場および最後に行われた家畜の競り市を取材した「Dam」、フラームスブラバント州とKadocの依頼でフラームスブラバント地方に伝わる祭事パレードをテーマにした 「Voetsporen van devotie」などドキュメンタリー作品も手掛けている。また、数年に渡り世界中のキリスト教を撮り続け、フローニンゲンのイベント 「Noorderlicht」で行われたグループ展「Act of Faith」に出展している。
Nick Hannes
ニック・ハネス(1974年生まれ)
ベルギーのニュース雑誌KnackおよびMO、有力新聞De VolkskrantおよびDe Morgenなど大手メディアでフリーランス写真家として従事する傍ら、主にクルド人(「Verboden Volk」)やベルギーの難民訴訟(「Verkeerde tijd, verkeerde plaats」) を扱うドキュメンタリー作品を撮影した独自のプロジェクトも発表している。かつてのソビエト連邦を撮り続けたドキュメンタリー「Red Journey」シリーズを2009年にアントワープの写真博物館で発表し、Nikon Press Photo Award賞を獲得した。フォトエージェンシーReporters、 Hollandse HoogteおよびCosmosに登録する傍ら、ゲントのKASKで客員講師として教壇に立ち、ドキュメンタリー写真に関する講義を行っている。
Eric de Mildt
エリク・デ・ミルト(1966年生まれ)
フリーランス写真家としてDe Standaard紙に従事するほか、Le Soir Magazine、 Elle、 Marie-Claire、 Goedele、De Morgen、 NRC-Handelsblad、 Vanguardia、 Liberation、National Geographicなど世界の主要メディアに作品が掲載されている。さらに、欧州委員会、フランダース文化施設De Brakke Grond、難民収容施設Fedasil、精神医学センターDr. Guislainなど様々な施設や機関、アムステルダムやアントワープなどの大都市、フェアトレードMax Havelaar、貧困国支援を行う国際団体Oxfam、グリーンピースなどをテーマにしたルポルタージュ写真やドキュメンタリー写真を撮り続けており、 写真展も開催している。
最近の主な作品には、2008年のフランダース地方の労働者や工場労働を取り上げたプロジェクト「Fabriekswerk」があり、Lannoo社から出版されている。
Jimmy Kets
Philippe Herbet
フィリッペ・ヘルベート(1964年生まれ)
リエージュのInstituut Saint-Lucで写真を学ぶ。文学にも造詣が深く、写真作品を発表する際には、自ら執筆した文章を添えている。すでに7冊の写真集を出版しており、ベ ルギー国内だけでなくフランスやドイツ、ベラルーシなどでも定期的に写真展を開いている。2009年には独自のプロジェクト「Magadan」で Stichiting Spesから賞を受ける。2010年はイスタンブールのゲーテ・インスティトゥートと共同でプロジェクトを進めている。ベルギー南部シャルルロワの写真美術館で個展を開催、シリーズ「Made in Belarus」を発表した。写真家としての活動の他、パリのギャラリーCamera ObscuraおよびベルギーのギャラリーJacques Ceramiの代表も務めている。
Loïc Delvaulx
ロイク・デルヴォー(1976年生まれ)
グリーンランドに暮らすイヌイットの生活をテーマにした作品を撮り続ける傍ら、現在はハイチやドミニカ共和国の様子を写真に収めるなどの活躍をしている。フォトエージェンシーRapho(Eyedea presse-Paris)の代表を務める。
Marine Dricot
マリネ・ドリコー(1988年生まれ)
2009年、新人写真家に贈られる「Emerging talents in photography 2008」の栄誉に輝いたのをはじめ、作品「en quete de belgitude」がLe Vif/L’express主宰のインターネットコミュニティで賞を獲得した。写真雑誌Viewおよび「soyons.net」のサイトに作品を発表して いる。
Wim Knapen
ヴィム・クナーペン(1986年生まれ)
ゲントのKASKを卒業したばかりの若手写真家。映像関連の文化施設het centrum voor beeldexpressie主催のアントワープで開催された「the human condition」展に卒業作品「Sur les Cercles」を出品。
Alain Schroeder
アラン・シュローデル(1955年生まれ)
1979 年よりスポーツカメラマンとして活動。1986年にフランス人写真家ヤン・アルテュス=ベルトランと写真集「Roland-Garros, par les meillieurs photographes de tennis」を共同製作する。創作活動の傍ら、1989年に2名の仲間とともにフォトエージェンシーReportersを設立。2006年にはワロン地方の祭事パレードを題材にした写真集「Processions de Foi」を刊行した。