「Ben X」は、実話をもとにした小説を監督のニック・バルタザールが映画化した作品である。小説が発表された後すぐに舞台化され、遂に映画化が実現した。
2002年、軽度の自閉症を患う17歳の青年が、ゲントの観光名所フランドル伯の城(ベルギー)から飛び降り、天国へと旅立った。新聞で見つけたこの実話をもとに、ニック・バルタザールは「Niets was alles wat hij zei」を執筆する。
この作品は発表後、Roel Vanderstukkenの主演で舞台化された。助成金などの資金援助を一切受けることなく上演を開始し、プラガ・カーンの曲や、7分間のショートフィルムを組み込むなど、マルチメディアを駆使した舞台となり話題を呼んだ。
こ の舞台作品の成功が、やがてバルタザールの映画監督デビュー作となる「Ben X」を生み出すきっかけとなった。映画「Ben X」は、2007年の第31回モントリオール世界映画祭に出品され、世界各国の審査員が選ぶ観客賞「Grand Prix des Amériques」を受賞した。
「Ben X」は、軽度の自閉症を患うベンの視点から描かれた作品だ。ベンは、オンラインゲーム「アークロード」でヒーローになりきり、思いのままの世界に浸って生 きる青年である。しかしながら、ゲームの世界とは裏腹に、現実の世界ではクラスメートからの尽きることのないいじめと屈辱に耐える日々を送る。
この映画で見られるような、バーチャルな世界で繰り広げられるシーンと実写シーンが巧みに交錯する手法は、映画史上初めての試みである。
第15回大阪ヨーロッパ映画祭でのお披露目が、本邦初公開となる。
2008年11月24日
場所 リサイタルホール